レースレポート
Formula-Nippon 第1戦 鈴鹿

[その1(いでっち)][その2(かもさん)]

その1

3月25日(土)

待ちに待った開幕戦。空は晴れ、心地よい春風の中、久しぶりに訪れた鈴鹿サーキット。花粉症対策も日焼け止めもばっちり。今回は初めて鈴鹿のパドックに入ることができるので、ちょっとどきどきしながらゲートをくぐる。
一般客も柵の内側に入ることができるようになった、ということで、控え室とピットを行き来するドライバーや監督をかなり間近に見ることができた。

公式練習

公式練習直前に立川選手と話す機会を持つことができた。テストで絶好調だった立川選手。「表彰台はいけそうですか?」と聞いたところ、「やってみないと分からないけど、いいところまでいけるんじゃないかな?」と控えめな発言の裏にも自信と気迫を読みとることができ、期待に胸を膨らませながらS字コーナーで公式練習を観戦。

9:40にコースオープン。前半調子が良さそうなのは0、5、9、55、68など。立川選手も一時3番手に入るなど、順調にタイムを出している。トップタイムは1分47秒台から46秒台へ。ファーマン選手が1'46.897を出すと、高木選手もすかさず1'46.783を出し、トップの座を奪う。
開始後40分経ったころから、11番が電光掲示から消えてしまう。代わりに2、19、56という数字が登場。練習とは言え、予選に向けて良いタイムを出して欲しいが、自己ベストは1'47.688。なんとかトップから1秒以内で8位に食い込むことができた。
公式練習順位は0、9、55、6、2、19、68、11、56、62。3位以下は混戦で、立川選手も上位グリッドを充分狙えるポジションである。

公式予選1回目

午後に入り、雲が出てきて風も強くなってきた。時折雪混じりの雨も降るなど、サーキットはすっかり冬に逆戻り。

シケインに移動して1回目の予選を観戦。14:20にコースオープン。序盤トップに立ったのは68番の道上選手。立川選手は3番手のタイムを出している。しかし、すぐにファーマン選手、高木選手がタイムを塗り替えていく。高木選手がいきなり1'46.883を出してトップに立つと、56、6、9も46秒台前半から45秒台後半のタイムを叩きだし、激しい上位争いを繰り広げるが、その中に立川選手の名前は出てこない。
あれだけテストで好調だった立川選手に何があったのか?電光掲示がないシケインで、必死にスピーカーからの放送に耳を傾けるが、肝心なところでマシンのエンジン音にかき消され、情報を得ることができないまま45分間の走行を終えてしまった。
トップタイムはラルフ・ファーマン選手の1'45.404。以下、68、0、6、55、56、2、19と続き、立川選手は1'46.126で9位であった。

公式予選2回目

予定より10分遅れて16:15から始まった2回目の予選。開始後5分、ダンロップで56がコースアウトし、赤旗で一時中断。コースに出ていた立川選手もピットに戻る。
16:29に予選再開。立川選手はピット出口付近で止まってしまい、再びピットに戻され、エンジンルームを開けてセッティングを調整し直している。5分後に再びコースに出るが、2周走っただけでピットイン。とてもアタックできる状態ではないようである。何か大きなトラブルで無ければ良いが・・・。

予選が中盤に差し掛かっても、上位陣は1回目のタイムを上回っていないようである。残り時間20分を切ったところでようやく高木選手が1'45.381でトップに出ると、待ちかまえていたかのようにファーマン選手が1'45.262でタイムを塗り替える。そこにクルム選手も1'45.029を出してトップ争いに参戦。どのマシンも本腰を入れてアタックを始めたようである。
立川選手もコースに復帰しアタックラップに入ったというその時、130Rでルーキーのアレックス・ユーン選手がクラッシュ。マシンを大破してしまい、2度目の赤旗中断を余儀なくされる。この時点での上位は、6、9、0、19、68、10。立川選手は1回目の予選タイムを上回ることができず、10位にとどまっている。

約10分の中断の後、残り12分で予選が再開された。立川選手は残り10分というところでコースイン。3周目に1'45.993の自己ベストを記録。しかし、ファーマン選手と金石選手は1分44秒台に突入するなど、上位陣もますますタイムを更新していく。結局立川選手は10位で決勝を迎えることになってしまった。こうなったらスタートダッシュで表彰台を狙うしかない!!

3月26日(日)

フリー走行

身も心も冷え切った予選日を反省し、完全防備で決勝に挑む。天気は晴れ。昨日よりは若干暖かいようだ。8:30から30分間のフリー走行が始まった。続々とコースに出るマシンの中に立川選手の姿はない。開始後5分経ってようやくコースイン。しかし立川選手は絶不調。フリー走行は15位に沈んでしまった。
心配になり、セルモのエンジニアの方に聞いてみたところ「ミッションが壊れちゃったから直してるところ。レースは問題ないよ」と明るく答えてくれたので、ちょっと安心。あとはエンジニアの人たちにがんばってもらうしかない!!

トークショー

10:40から始まるトークショーには、2輪の伊藤選手と井筒選手、FNからは脇阪寿一選手、そして立川選手が参加。
のはずが、FN組は時間になっても現れない。代わり(?)に登場したのが2シーターに乗りに来た、元ボクサーの薬師寺保栄さん。とりあえず2輪の選手だけで話を進行していると、ステージ裏からちらっと脇阪選手が顔を覗かせて、紹介もなく2人がステージに登場。脇阪選手曰く、トークショーのステージを間違えて、別の場所で控えていたらしい。

立川選手の主な会話を抜粋。

永田:
セルモはテストで調子よかったのに、どうしたの?
立川:
セルモですから。それがセルモなんで(笑)。ミッションが壊れたから・・・直れば大丈夫です。
永田:
タイヤ交換が、他のチームと違って工夫してるみたいだけど。
立川:
よく見てないからわかんない。でも早いほうみたいですね。

あまり話す時間もなく、チャリティーオークションに突入。しかしFNの二人はオークション用の品物を用意してこなかったため、あわててステージの裏にあった(らしい)Fニッポンのトレーナーにサインをして登場。99年の秋美祢でも一緒にステージでオークションを行い、完敗した脇阪選手はなんとか立川選手よりも高い値段を付けようと必死になっていたが、今回は1万円でじゃんけん。両者引き分けということに。時間が押していたので、慌ただしくステージを後にしました。

ピットウォーク

トークショーが終わるとまもなくピットウォークの時間に。11番のマシンはエンジンを外し、エンジニアの人たちがミッションを囲んで深刻そうにしている。ウォームアップ走行まであと2時間しかないというのに、マシンを分解した状態というのは、決勝に向けて不安が残る。立川選手も心配そうに作業を見守っていた。
開幕戦ということもあり、取材陣の写真撮影がひっきりなしに行われる。11番のマシンが分解されてしまったため、12番のマシンを囲んで、チームメイトのヤレックと写真撮影。そうこうしているうちに、無事にギアも積み終わり、修理完了。エンジンをかけてアクセルを踏んだり、いろいろ試していたが、どうやら問題なさそうである。良かった良かった。

決勝

14:00から始まったウォームアップ走行で、立川選手は5周走ってスターティンググリッドに着いた。

14:30、ついに開幕戦の決勝が始まった。フォーメーションラップを終えてグリーンフラッグが振られる。そしてスタート!!立川選手は見事スタートダッシュで7位まで順位を上げる。今年から導入されたタイヤ交換制度。最初に行ったのは野田選手。なんとたった1lapでピットに入ってしまった。気温の低いこの時期なら、ソフトタイヤでも35周走れるという戦略のようだ。セルモの動きも気になるところ。
コース上は所々雨が落ちてきており、路面が滑りやすくなっているようだ。5周目、3位を走っていたファーマン選手が130Rで大クラッシュ!!これを見た服部選手はすかさずタイヤ交換を行う。さすがCART経験者。一方立川選手はこのクラッシュの影響で脇阪選手に抜かれてしまう。その直後にセーフティーカーがコースに入ったため、立川選手もタイヤ交換を行う。クルム選手、高木選手、本山選手なども同時に入ったため、ピットレーンは大混雑。それでも立川選手は問題なくタイヤ交換を終え、コースに戻る。

セーフティーカーの先導が終わり、レースが再開する頃には、スリックタイヤで走るのが困難なくらい路面が濡れてきた。高木選手が130Rで単独スピンをしたと思うと、あちこちでクルクルクルクル。立川選手もダンロップでスピンをしてしまい、順位を落とす。
悪天候の中一番雨がひどかったスプーンで野田選手と道上選手がクラッシュ。再びセーフティーカーが導入される。ここで1回目の黄旗の時にタイヤ交換をしなかったチームと、強くなった雨に備えて浅溝タイヤに履き替えようとするチームが一気にピットに駆け込んだため、大混乱。このとき立川選手はピットインせずに、コースを走っていたのだが、なんと突然の赤旗中断が決定。チームもドライバーも観客も状況がつかめぬまま、レース再開を待つことに。
場内放送で「15:30にローリングスタートでレース再開」と言っていても、ドライバーも車に戻っていない様子。そして再開予定時刻直前にスタートが延期され、チームのミーティングが始まったという情報が入る。もしかしてオフィシャルが一番混乱してるのか?再開を待つ間にも、天気はめまぐるしく変わり、タイヤ選択の判断を難しくさせている。

タイヤ交換の途中で赤旗になったドライバーなどは、自分の順位も分からなかったであろう。結局10周終わった時点での順位でレースが再開されることになった。中断から約1時間。開始時の順位と選択したタイヤは以下の通り。
19(浅溝)、6(スリック)、55(浅溝)、2(浅溝)、56(浅溝)、5(スリック)、63(スリック)、0(スリック)、11(浅溝)、12(浅溝)、14(スリック)、3(スリック)、62(スリック)
15:55、残り22周の2パート制でレースが再開された。中断の間にすっかり路面が乾いていたのを見て、本山選手と金石選手はすかさずピットインしスリックタイヤに履き替える。雨が降ることを期待しつつも、現状ではスリックタイヤにかなわない。浅溝のマシンはあっという間に順位を落としてしまう。次の周では脇阪寿一選手もたまらずピットインするが、なぜかセルモの2台はそのまま走り続けてしまう。スタート時には遙か後方にいたマシンにもダンロップであっけなく抜かれてしまう。開始後2周終わってようやくスリックタイヤに履き替えた立川選手は、すでに上位争いからは脱落。

しかしスリックの立川選手は速かった。前を走っていた松田選手をあっという間に追い抜き、どんどん差をつけていく。そして、タイヤ交換時の失敗で時間をロスしてしまい、11位に落ちてしまった脇阪選手もガンガン攻めた走りを見せ、ファステストラップを叩き出す。そして、立川選手は残り5周でOSAMU選手を追い抜き8位に上昇。ポイント獲得まであともう一息なのだが・・・。
上位陣はトップのクルム選手を高木選手が必死に追いかける展開。残り10周の時点でその差は5秒を切った。そして残り7周で3秒差。これはもしかしたらもしかするぞ?!という展開に。
残り2周、二人の差は1秒を切った。バックストレートから130Rを抜けてシケインへ。高木選手は、ブレーキを踏むクルム選手の横にグッと入り込み一気に抜き去ったのである。そのままファイナルラップを迎え、チェッカー。高木選手のすばらしい追い抜きが赤旗中断のゴタゴタをすべて消し去ってくれた。

国内復帰第1戦目にして、見事優勝した高木選手。2位は前半と後半のタイムが合算されて自分が優勝だと勘違いをしていたらしいクルム選手。3位はこれまた国内復帰組の服部選手。大荒れだった展開にも集中力を切らすことなく表彰台に上がった日本人二人の走りには、世界を経験してきた自信がみなぎっていたように思える。
完走したものの8位という結果に終わってしまった立川選手に関しては、タイヤ選択、タイヤ交換のタイミング。この2つの判断ミスがレースを決めてしまったと言っても良いであろう。せめてもう1周早くタイヤ交換を行っていたら・・・。セルモは実力のあるチームであることは確か。今回の失敗を次のレースに活かして、表彰台に上がって欲しい。

その2

決勝日

朝っぱら(3:00(^^;)に鈴鹿入りする。雨が振り出した。
仮眠を取ると朝方に結構雨が降ってきて目が覚めるが、ちゃんと起きなおした時には晴れていて日が差している。

フリー走行

S字で観戦。
そう言えば 2000年カラーの FNマシンをサーキットで見るのはこれが初めてであった。
カラーリングの変更にやや戸惑う。セルモがルマンに見えてしょうがない。(笑)

立川選手はどうもぱっとしない。極端に遅いわけでもなさそうだが、それにしても何かがおかしい。周回数をこなしているが、タイムは上がっていないようだ。PitFMでも名前が挙がってこない。

決勝

シケインで観戦。雨は降ったりやんだりが繰り返される。サポートレースではこれが結果に影響している。波瀾含みか....
ついに2000年のFNシーズンが始まる。心地良い緊張がなぜか私にも感じられる。

立川選手はギアのトラブルでフリーを終えたらしい。必死の作業で決勝には間に合わせてくるとの事であった。

遠くのエキゾーストが高まり、スタートが切られた。
立川選手のスタートは良かった。2台をかわして1コーナーへ。

路面はドライ。トップ集団は結構大きな集団になっている。その一番後ろには立川選手。ペースは悪くない。ぴったりとつける。後ろは少し離れた。

雨が降る。ペースが落ちる。と、そのときラルフが 130Rでクラッシュ。セーフティカーが導入される。これがこのレースの大混乱の発端であった。
各車がピットイン。ピットは大混乱(だったらしい)。しかしセルモは入らず、立川選手はスリックのまま周回を重ねる....が、ここで赤旗。

順位が既に誰もわからない状態になっている。大混乱。
リスタートのアナウンスもあるが、スタートはしない。結局1時間近く待たされる。
この間も雨は降ったりやんだりを繰り返し、第2パートのスタート時のタイヤ選択は難しいようであった。

第2パートのスタート直前、雨は止んでいる。しかし、厚い雲が西コースに見えないこともない。セルモはインターミディ(?)を選択。

第2パートのローリングスタートが切られた。
路面はドライのまま。同じくスリックを選択しなかった本山は迷わずペースカーと同時にピットイン。これで大きく順位を落とす。
しかし、立川選手は入らず。
ドライ路面でのインターミディは辛すぎる。完全に前に付いていくことが出来ず、ずるずる遅れる....しかし、まだ入らない。
第2パートのスタートが切られてから 3ラップ目、立川選手はついに 3台(4台?)に抜かれ、大きく順位を落とす。我慢しきれずにピットイン。これでは勝負にならない。

その後、ラップリーダーの直前で単独で周回をこなす。ドライでスリックならばペースは決して悪くないのだが、それにしても戦略が悪すぎた。

ストレスが貯まったままに、フィニッシュ。

今回のレースは完全に走ること以外で決まってしまった。確かにそれもレースの内なので、それが言い訳にはならないが、こういう混乱したレースの中でも結果を残せるドライバーは居たのだから、それは言い訳にはならないか。

ドライでのペースは悪くなかった。それをいかせる戦略がなかった。
次戦以降、それに降りまわされることなく走って欲しい。


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